こんにちは。みなさまお元気にお過ごしでしょうか?
前回2回に分けて「かつらの種類」についてお話をしましたが、今回は「かつらの工場」についてのお話です。
みなさんは「かつら」がどこでどのように製造されているかご存じでしょうか?
目次
かつら工場
現在市場に流通している「かつら」は、かつら工場で生産されています。
以前は日本でも製造していましたが、人件費などの高騰で、現在日本でしか作製できない「和かつら」など一部の製品を除き、日本のほとんどの「かつら」は、アジア圏の国々から輸入している状況です。
一昔前は、韓国がかつら生産のメッカでした。
1960年代半ばから1970年代まで「かつら」の輸出は韓国の基幹産業の一つでもありました。
しかし、韓国のかつら工場も人件費などの高騰から生産拠点を中国に移していきました。
中国のかつら工場は、中国国内の様々な地域に分布し、各地域により得意とする「かつら」の種類が異なっています。
数年前に中国の工場をリサーチした時点では、中国各地に200を超える工場がありました。
中国の「かつら」の輸出量は現在でも世界最大規模ですが、中国でも日本や韓国と同じ、人件費などの高騰から、世界各国のかつらメーカーは、その生産拠点を東南アジアの国々に移しています。
既製品かつらの工場
既製品かつらは総じて小売価格が安いため、製造コストを最大限に抑える必要性から、インドネシアやミャンマー、タイ、フィリピンなどに大規模な生産工場をつくり大量生産型の生産を行っています。
アメリカ向けなど出荷量が多い既製品かつら工場は、数百人から5千人を超える工員を超える規模で、分業制の人海戦術で生産されています。
主な分業の各セクションは、下記のとおりです。
型起こし
かつらのベースのデザインを作成
型作製
木型や石膏、セロファンなどでベースの型を作製
かつらベース作製
型どおりのメッシュや樹脂素材でかつらのベースを作製
かつらベースの部品作製
クオリティの求められるフロントやトップ部分の他のサイド部分や後頭部部分の部品の作製
リボンにミシンで髪の毛を縫い付ける作業など
かつらベースの組み立て
かつらベースのメイン部分とその他の部品をつなぎ合わせ型どおりに組み立てる
人毛の加工
キューティクルを剥がす作業など
人毛の染色
色ムラをなくすための染色作業
人毛及び人工毛の配色
希望のカラーチャートに色を近づける為に複数の単色の毛を混ぜて自然な色合いにする
整髪
複数の毛を専用の道具で整髪することで、毛の長さを均一にしたり、毛絡みをなくす
人毛及び人工毛のカールづけ
人毛はコールドパーマ、人工毛は直径の異なる複数の金属製のパイプに巻き付けボイラーに入れる事で、毛に様々な大きさのカールをつくる
人工皮膚への植毛
樹脂製の人工皮膚にミシンを改良した植毛機械で植毛を施す
メッシュへの植毛
自然さが特に求められるフロントやトップ部分に、手作業で植毛を施す
ヘアカット及びヘアセット
植毛がされたかつらにヘアカットとヘアセットをして納入先の希望の髪形に仕上げる
検品
各セクションごと及び完成時に、商品が規定通りに作製されているか品質検査の実行
箱詰め
納品先の指定する個箱や袋に詰める
出荷作業
アウターカートンへの荷詰めや輸出業務
オーダーメイドかつらの工場
基本的には、「既製品かつら」の工場と変わりはありませんが、規模はもっと小さいか、もしくは「既製品かつら」の別セクションとして同じ工場内で生産をしています。
オーダーメイドかつらは、基本的にはハンドメイドのかつらになるので、手作業の植毛技術が重要になります。手作業の植毛は、上手下手がはっきりしますので、商品クオリティの標準化には、職人の育成が必須です。
しかしながら、この作業は非常に細かい作業で長時間行う必要があるため人材の確保がポイントになります。
植毛技術に関しては、改めてお話をしたいと考えています。
その他毛髪製品の工場
かつら工場の中には、かつら生産とは別に「付けまつ毛」や「まつ毛エクステ」、「ヘアエクステンション」などの毛髪製品を専門に生産する工場もあります。
三つ編み・編み込みのヘアスタイル「ヘアブレード」に使用する毛材の需要が高いようです。
まとめ
かつらの工場には、各国の毛髪メーカーの直営工場もありますが、独立した工場でファミリービジネスとして運営している会社も多いようです。
東南アジアなどの工場は、韓国系の会社がマネジメントしているところが多いように感じます。
かつら工場は、特定の地域に集まって運営されており、生産状況により受けた注文を近くの他の工場でつくってもらうなどお互いに助け合っているようです。
かつら工場は、毛材やメッシュなどの部品を専門の商社やサプライヤーから仕入れており、これらの商品(人工毛やメッシュなど)は日本や各国の大手繊維メーカーが供給していることが多いです。
仕入れる部材の価格やそのクオリティは、生産される「かつら」の評価に少なからず影響しますので、各社慎重に購買しているようです。