どうも、ヘアコンタクト開発担当です。
前回、ヘアコンタクト開発に向け新しいアプローチを進めることになるとお話ししましたが、今回は製造方法のアプローチからお話させていただきます。
新商品のコンセプトは決まっていましたが、まずは試作品を作らなければなりません。
スタートはもちろん当社のカツラを作成している工場への依頼です。
薄いシートに髪を植えてほしいと依頼。期待と不安が入り混じる中、試作品が上がってきました。
出来上がりを見てびっくり(良い意味ではありません)、とても商品と呼べるものではありませんでした。
シートに髪を通して結んだ部分が盛り上がってしまい表面はザラザラ。結んだ箇所でシートが引っ張られて縮んだ状態(とにかく話にならなかったのです)。
「う~ん」と頭を抱えて、しばし呆然…。
「こりゃ、どんなに優秀な職人さんにお願いしても今までのカツラの作り方で考えてたら思っている商品は作れないな!」と頭を切り替えて再スタートしたのです。
その当時から(今もですが)透過性があって薄手のカツラというのはあるのですが、耐久性が低く逆に通常のカツラよりも割高になってしまうものがほとんどでした。
ということで始まったのが植毛機、機械化へのアプローチです。
ここに至るまでにも相当な時間がかかっているのですが(頭を抱えていた時間が長かった~、つらかった~)。
機械製作の担当者が最初にかかったのが、植毛針の設計。髪の毛に使う人工毛はいわゆる繊維なので縫い針を使って植毛するという考え方です。
当初は一般的なミシンや刺しゅう機を応用すれば何とかいけるのではと思っていたのですが、どっこい考えが甘過ぎました。
それは何故か?
刺しゅうというのは生地の表裏に糸を縫い付けていけば良いのですが、髪の毛として糸を生かすためにはベースのシートから少なくとも15センチ以上の長さが無ければなりません。
ミシンや刺しゅう機のストローク(針が上下する長さ)は長くても数センチ。
なので従来のミシンや刺しゅう機は応用できないないのです。もちろん針も。
シートに針を刺して髪の毛を引っかけた上で15センチ以上シートから引き抜いていく。
そのための針を独自に設計していくことになりました。
文字にすると短いのですが引き抜く際におきる針と髪の毛との摩擦が大きければシートを引っ張って破いてしまう問題が生まれ、逆に摩擦が小さすぎると髪の毛が途中で針から外れて引き抜けないため、適切な摩擦量を保つことは、とても難しかったのです。
さらに植毛スピードを上げいこうとすればそれだけ調整がシビアになります。
最初の試作機の植毛スピードはとても遅く、針が動くたびに“カッツーン”という音がするのですがそれがまるでお寺の鐘をついているかのようなリズムなので、思わず「除夜の鐘かよ!」と心の中で突っ込んでしまったほど。
一つ縫い上げるのにいったいどのくらいの時間がかかるんだろうと不安な気持ちになったものでした。
針だけで何十種類も試作を重ねてきました。
初期試作機に搭載していた針と現在生産している最新機に搭載している針は全く別物になります。
世界中が手作りのカツラを使用している中、熟練したカツラ職人の手を超えるための製造方法への挑戦はまだまだ続きます。
=次回=
ヘアコンタクトの歩み~新たな素材との出会い~