“無謀な選択!?”《第2章》
ど~も、ヘアコンタクト開発担当です。
スプレーガンメーカーのご厚意により塗布作業を委託したことで粘着剤試作を何とかスタートすることができました。
お願いしてから数日がたって、担当者から1本の電話が入りました。
『いただいた粘着剤原料の粘度が高すぎてスプレーガンで塗布しようとしても風船ガムのように膨らんでしまって霧状に塗布することができないんです』
『粘度を下げるために薄める材料はありませんでしょうか』
「わかりました用意しますので少しお待ちください」
と、言ってはみたものの原料のみをサンプルとして手に入れていただけなので、希釈する材料は手元にはありません。
当然社内にその材料が分かる者もおらず、サンプル提供いただいた会社の担当者へ電話です。
「いただいたサンプルを薄めたいのですが、何で薄めれば良いのでしょうか」
今思えば情けない話です。自分たちで粘着剤を作ると決めたにもかかわらず協力いただく会社の方に何から何まで頼り切りなのですから。
サンプル提供先は原料メーカーですので、肌用粘着剤の製造における材料まではわかりません。そのことを前提とした上でサンプル原料に比較的多く使用されている希釈剤を教えていただきました。
教えてもらった希釈剤は薬局で手に入ることがわかり、早速購入。
スプレーガンメーカーの担当者に渡すことができました。そこから1カ月ほど経って、連絡が入ります。
『試作したものを持ってお話しに伺いたいのですが』
担当者の口調からあまり良くない話かなと感じはましたが、詳しいことは会ってから聞こうと思い、来社を待ちました。
担当者が来社し、開口一番
『結論から言いますと粘着剤の塗布はうまくいきませんでした』
試作したフィルムを見せながら説明を受けました。
『前回お話した通り粘度が高い状態では材料が膨らんでしまうので、いただいた希釈剤で薄めて試作していきました。気泡は徐々に小さくなったのですが、なかなか均一に塗布することができず希釈剤の量を増やし、何とか霧状に噴射できるまで薄めて塗布したところ今度はシートが溶けてしまう現象が出てきてしまいました』
色々と試したところ、粘着剤の原料ではなく、どうやら希釈剤がシートを溶解させてしまうようだとのことでした。
さらに溶けない程度で薄めた状態では小さな泡が発生してしまうので均一には塗布されず粘着量の厚さにもバラツキが出てしまいました。
フィルムメーカーにも確認したところ溶剤によっては、影響を受けることがあるとのことでした。
ポスターなどの裏面に吹きかけて使用する市販のスプレー糊があるのだから、難しくはないだろうと考えていました。
しかし現実は専門的な知識無くして進めていくことは難しく、どんな材料を使えばよいかを見つけることすら何時になるかわかりません。これ以上進めていくことは時間ばかりかかって、完成の目途も見えないというのが現実でした。
自社での粘着剤製造という挑戦は、当時としては無謀な選択だったのです。
ということで、ふりだしに戻ってしまったのでした。